労働判例の部屋
似た事例であっても別の事件では、見解が異なる場合があります。
掲載した判例はひとつの事例として、参考程度としてご覧ください。
 
※ 中労委の裁定(命令)は、「労働関係トピックス」に掲載します。
 
 

21    国鉄の組合差別を認める/東京地裁 2008/01/25
 1987年の国鉄分割・民営化で、JRに採用されず、旧国鉄清算事業団も解雇された旧全国鉄動力車労働組合(全動労)の組合員と遺族計58人が、事業団を引き継いだ鉄道建設・運輸施設整備支援機構を相手に、不採用は違法として慰謝料などの支払いを求めた訴訟の判決が23日、東京地裁であった。
 佐村浩之裁判長は組合差別を認め、一人550万円、計3億1,900万円の慰謝料支払いを命じた。機構側は判決を不服として、控訴した。
 JR不採用問題で、組合差別を認定した判決は2度目。
 佐村裁判長は、分割・民営化に賛成していた労組と反対していた全動労の組合員では採用率に大きな差があると指摘。「所属する労組が採用に影響を及ぼしていることは否定し難い。全動労組合員であることが不利益に作用した」と述べ、国鉄の中立保持義務違反を認定した。
 機構側は賠償請求権が時効(3年)で消滅したと主張したが、同裁判長は、不採用の責任主体がJRではなく国鉄にあるとの判断が最高裁で確定した2003年12月が時効の起算点になるとして退けた。
 判決によると、原告らはJR北海道などへの採用を希望したが、採用候補者名簿に登載されなかった。1987年4月に国鉄清算事業団が原告らを再雇用したが、再就職あっせん期限経過後の1990年4月に解雇された。

22    有期雇用反復更新での更新拒否で慰謝料/東京高裁 (2007/11/30)
 東京都中野区立保育園に任用期間1年を反復更新する形で長く勤務してきた非常勤保育士が、再任用を拒否されたのは正当な理由がなく無効だとして地位確認や損害賠償などを求めた裁判で、東京高裁は29日、「実質的にみると雇止めに対する解雇権濫用法理を類推適用すべき程度にまで違法性が強い事情」の下に、再任用による非常勤保育士らの雇用継続の期待権を侵害したなどとして、区に一審東京地裁を上回る「報酬の1年分に相当する程度」の慰謝料支払いを命じた。
 地位確認の請求については、原告の非常勤保育士らは地方自治法に基づき任用されており、再任用を請求する権利はないなどとして、一審判決と同様に棄却。一方、実質面で差がないにもかかわらず、公務の非常勤が民間の有期契約に比べて不利となることは確かに不合理だと指摘し、「実質面に即応した法の整備が必要」との見解を示した。

23    業績悪化による退職金不払いは正当/最高裁 (2007/11/21)
 リコール隠しによる業績悪化で退職慰労金を支給しなかったのは不当として、三菱自動車の元執行役員の男性が同社に6,000万円の支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(津野修裁判長)は16日、「退職慰労金を必ず支給するとの合意や慣習はなかった」として、男性の上告を棄却した。これで、男性敗訴の一、二審判決が確定した。
 上場企業などで導入が進む執行役員の退職金をめぐる最高裁判決は初めて。
 同小法廷は、
  ・ 三菱自の執行役員は社員と異なり、待遇は取締役と同等だった
  ・ 退職慰労金を必ず支給するとの内規はなかった
  ・ 執行役員と取締役全員の退職慰労金支給が見送られた
            −などと指摘した。
 その上で「退職慰労金は功労報償的な性格が極めて強く、代表取締役の裁量で支給されていたにすぎない」として、男性の主張を退けた。
 判決などによると、男性は2000年6月、従業員としての退職金約3,300万円を受けとって、執行役員に就任。2004年6月に退任するまでの報酬の総額は約 9,100万円だった。
 三菱自はトレーラーの欠陥を隠ぺいしてリコールを逃れた事件の影響で、2004年3月期に約2,100億円の最終赤字を計上し、役員退職慰労金の支給見送りを決めた。

24    内部告発警察官の配置換えに慰謝料/松山地裁 (2007/09/14)
 愛媛県警の捜査費不正経理問題を記者会見で告発した県警巡査部長仙波敏郎さん(58)が報復人事による配置換えで精神的苦痛を受けたとして、県に100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、松山地裁(高橋正裁判長)は11日、報復人事と当時の県警本部長の関与を認定し、請求額全額を支払うよう県に命じた。
 高橋裁判長は配置転換について、内部からの造反に対するいわゆる報復だったことが推認されると指摘。「社会通念上著しく妥当性を欠くといわざるを得ず、仮に(配転先の)通信指令室の体制強化の必要性が認められても、原告を配置換えする理由にならない」として、異動の合理性を訴えた県側の主張を退けた。
 当時の粟野友介県警本部長(現警察庁交通指導課長)の関与について、同本部長らの指示を受けた仙波さんの上司の地域課長が、記者会見をやめるよう説得したと認定。「配置転換は課長権限のみに基づき行われたことは到底あり得ず、本部長の関与は否定できない」と述べた。問題を公表した経緯に関しては、仙波さんが偽領収書の作成を不正行為と考え、上司の指示を拒否し続けたことがあったとした。
 判決によると、仙波さんは2005年1月20日の記者会見で、1973 〜 1995年に勤務したすべての署で偽造領収書作成を依頼され、裏金づくりの手段になったと発表。その後に拳銃所持を禁じられ、鉄道警察隊から通信指令室に異動を命じられた。
 県人事委員会は昨年6月、不服申し立てを認め、仙波さんは鉄警隊に復帰した。
 県警は指摘された事実を内部調査で確認できなかったとする一方、これとは別に1998 〜 2004年度の捜査報償費(県費)や捜査費(国費)で計約436万円の不適正支出を認め、県や国に返還した。

25    入社半年での自殺、労災認定/福岡地裁 (2007/07/01)
 長崎県内のソフトウエア開発販売会社に入社し、約半年後にうつ病などで自殺したシステムエンジニアの男性=当時(24)=の遺族が、国を相手に労災認定を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は27日、業務と自殺の因果関係を認め、福岡中央労働基準監督署の遺族補償一時金などの不支給処分の取り消しを命じた。
 木村元昭裁判長は、男性について、納期に迫られながらシステムのトラブル処理などで、「過重の心理的負荷があった」と認定。男性は半年の間に勤務時間が急増し、自殺直前の出張中は、徹夜で作業を続けていたとした。
 国側はシステムのトラブル処理はさほど困難でなかったとしたが、裁判長は「初めての処理で、応用力も必要とされた」として退けた。
 判決によると、男性は2000年4月に入社し、福岡支店でシステムエンジニアとして勤務。同年9月26日、千葉県に出張中、遺書を残してホテルで自殺した。

26    経歴詐称 [懲戒処分] (2005/09/25)
1.ポイント
(1) 労働契約締結にあたり使用者が経歴の申告を求めた場合、労働者は原則としてこれに応ずべき義務を負う。
(2) 経歴詐称に対する懲戒解雇が有効かどうかの判断は、真実を告知していたならば採用しなかったであろう重大な経歴の詐称であったかどうかを基準とする。
(3) 学歴や職歴の詐称は、労働力の適正な配置を誤らせるような場合には、懲戒解雇が有効となる。
(4) 履歴書の賞罰欄にいう「罰」とは一般に確定した有罪判決(いわゆる「前科」)を意味する。(現在において、この欄はありません。)
 
.モデル裁判例
  炭研精工事件 最一小判平3.9.19 労判615-16
 
(1)事件のあらまし
 一審原告側労働者A(控訴人・上告人)は、中学または高校卒業者を募集対象者としてプレス工または旋盤工の求人申し込みをしていた一審被告側使用者B(被控訴人・被上告人)に応募し雇用された者である。Aは、応募の際提出した履歴書に最終学歴を高校卒業と記載し大学中退の事実は記載せず、また、有罪判決を受けることになる刑事事件の裁判の最中であり保釈中であるにもかかわらず「賞罰なし」と記載していた。Aは、軽犯罪法違反、また、公務執行妨害罪で逮捕され欠勤した。Bは、経歴詐称、7日以上の無断欠勤等が就業規則上の懲戒解雇事由に該当するとしてXを懲戒解雇した。
 そこで、Aは、従業員地位確認等請求の訴えを提起した。
 
(2)判決の内容 労働者側敗訴。
 Aに対する懲戒解雇を有効とした。
 「使用者が、雇用契約の締結に先立ち、雇用しようとする労働者の経歴等、その労働力の評価と関係のある事項ばかりではなく、当該企業への適応性、貢献意欲、企業の信用の保持等企業秩序維持に関係する事項について必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は、真実を告知すべき義務を負っているというべきである」とする二審の判決を認めた。
 最終学歴は、Aの労働力の評価及び企業秩序の維持に関係する事項であることは明らかであるから、Aは、これについて真実を申告すべき義務を有していたということができる。しかし、履歴書の賞罰欄にいういわゆる罰とは、一般的には確定した有罪判決をいうものと解すべきであり、裁判の最中の事件についてはいまだ判決が言い渡されていないことは明らかであるから、Aが賞罰がないとしたことは事実に反するものではない。したがって、Aが学歴を秘匿したことは、就業規則所定の懲戒事由に該当するが、裁判の最中であることを告げなかったことは懲戒の事由に該当しない。
 
3.解説
 
 「モデル裁判例」炭研精工事件判決では、経歴詐称が、使用者に労働力の適正配置を誤らせたり、信頼関係を基礎とする継続的な雇用関係に不信をもたらすなどの場合、懲戒解雇事由になるとしている。
 しかし、すべての経歴詐称が懲戒処分の対象となるわけではない。真実を告知したならば採用しなかったであろう重大な経歴詐称に当たる場合に懲戒解雇が有効とされることが多い。経歴詐称の事件でもっとも問題になるのが、学歴・職歴・犯罪歴である。これらに関して、裁判所は以下のように判断している。
 
(1) 学歴に関して、裁判例は、労働力の適正な配置を誤らせる等の理由がある場合には、これに基づく解雇を有効とする場合が多く見られる。
 具体的には、次のような場合は、いずれも秘匿に基づく解雇または懲戒解雇を有効としている。
・学歴により別個の職位を設定している場合(三菱金属鉱業事件 東京地決昭46.11.25 労経速777-3)
・高卒・中卒のみを採用する人事労務管理体制を一貫している場合(硬化クローム工業事件 東京地判昭60.5.24労判453-62)
・学歴を確定的な採用条件としている場合(スーパーバック事件 東京地判昭54.3.8 労判320-43)
・特定の学歴を重視している場合(相模住宅ローン事件 東京地決昭60.10.7 労判463-68)
・学歴が適格性判断の上で重大な要素の場合(正興産業事件 浦和地裁川越支決平6.11.10 労判666-28)。
 
 これに対して、次のような場合は、秘匿に基づく解雇または懲戒解雇を無効としている。
・学歴の詐称により経営の秩序が乱されたとはいえない場合(西日本アルミニウム工業事件 福岡高判昭55.1.17 労判334-12)
・学歴・職歴が労働力の適正評価に何ら影響がない場合(マルヤタクシー事件 仙台地判昭60.9.19 労判459-40)
・税理士の資格および中央大学商学部卒を詐称した事案において、業務遂行に重大な支障を与えたことにはならない場合(中部共石油送事件 名古屋地決 平5.5.20労経速1514-3)。
 
(2)職歴に関して、次のような事件がいずれも秘匿に基づく解雇または懲戒解雇を有効としている。
 まず、経験者であることを隠した事件として、タクシー運転手に関する事件がいくつか見られる。
・経験者を雇用しない方針のタクシー会社において、以前別のタクシー会社に勤務し懲戒解雇されたことを秘匿したことを理由とするタクシー運転手の事件(弁天交通事件 名古屋高判昭51.12.23 労判269-58)
・タクシー乗務経験の職歴を秘匿して採用された者に関する事件、(都島自動車紹介事件 大阪地決昭62.2.13 労判497-133)
・乗車券不正使用、自家用車の飲酒運転等を理由に解雇された職歴を秘匿して採用された事件(立川バス事件 東京地八王子支判平1.3.17 労判580-34)。
 
 次に、経験者であるとの虚偽申告に関する事件がある。
・経験者であるとの虚偽の申告により使用者に労働条件決定を誤らせた事件(環境サービス事件 東京地判平6.3.30 労判649-6)。
 
(3)犯罪歴に関して、「モデル裁判例」炭研精工事件最高裁判決以前の、大森精工機事件(東京地判昭60.1.30 労民集36-1-15)は起訴され裁判の最中であることは「罰」には含まれないとし、また、前掲マルヤタクシー事件判決も、履歴書の賞罰欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわゆる「前歴」)まで記載すべき義務はないとしている。さらに西日本警備保障事件判決(福岡地判昭49.8.15 労判208-31)は少年時代の非行に関し、申告義務はないとしている。
  ※ 現在においては就職差別をなくする目的から記載不要となっています。

27    JR西日本の「日勤教育」は不当/最高裁 (2007/06/30)
 上司に反抗したのを理由に日勤教育を受けさせられたのは不当として、JR西日本広島支社の男性運転士とJR西日本労働組合などが、同社と当時の上司に計約 1,700 万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は 28日までに、双方の上告を退ける決定をした。日勤教育の一部を不当労働行為と認め、同社側に約 57万円を支払うよう命じた二審広島高裁判決が確定した。
 運転士は2001年12月、「列車運転中に白手袋を外した」などとする上司の注意に反抗的な態度を取ったとして、運転業務を外され、2003年3月まで69日間の日勤教育を受けた。
 広島高裁は昨年10月、日勤教育のうち、後半の約1ヵ月について「教育目的という合理的理由はなく、会社や上司の業務命令権を逸脱している」として不当労働行為と認定。この期間中、運転士は労組脱退も働き掛けられ、精神的苦痛も受けたと指摘し、JR西側に賠償支払いを命じた。

28    大工の請負は労災対象外/最高裁 (2007/06/29)
 出稼ぎ先の工事現場でけがを負った山形県の大工の男性が、労災保険法に基づく休業・療養補償の支給を認めなかった藤沢労働基準監督署(神奈川県)の処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決が 28日、最高裁第一小法廷(泉徳治裁判長)であった。第一小法廷は、工務店と雇用関係がなく、出来高払いで仕事を請け負っていた男性は同法上の「労働者」に該当せず、支給対象にならないとして、男性側の上告を棄却した。
 男性は他人を雇わずに特定の工務店の工事に従事する「一人親方」と呼ばれる形態で働いていた。 1998年、神奈川県茅ケ崎市のマンション新築工事中に指を切断する事故に遭ったが、藤沢労基署は「労働者ではなく、個人事業主に当たる」として労災補償を支給しなかった。
 第一小法廷は
  ・ 具体的な工法や作業手順の指定は工務店から受けず、自己の判断で選択できた
  ・ 報酬は完全な出来高払いが中心だった
    ・・・と指摘した。
 その上で「工務店の指揮監督下に労務を提供していたとは評価できず、報酬は仕事の完成に対して支払われたもので、労務提供の対価とみることは困難」として、男性は労災保険法上の労働者に該当しないと判断。労基署の処分を妥当とした一、二審判決を支持した。
 なお、一人親方の大工でも労災保険特別加入の制度を利用すれば労災対象となる。

29    海外子会社出向者過労死労災認定/大阪地裁 (2007/06/08)
 米国で勤務していた夫がくも膜下出血で死亡したのは過重な労働が原因だとして、大阪市在住の女性が国を相手に遺族補償給付の不支給処分取り消しなどを求めた訴訟の判決が6日、大阪地裁であり、「発症前の業務は過重で死亡と因果関係があり、不支給は違法」と述べ、請求を認めた。
 裁判長は「夫は死亡前 1カ月の時間外労働が90時間を超えるなど、恒常的な長時間の仕事に長い間従事していた。人員確保などで精神的ストレスも受けていた」と指摘した。
 判決によると、女性の夫は1987年にワイヤメーカーが米国に設立した子会社に出向。副社長として労務、生産管理に当たっていた1995年5月に42歳で急死した。
 中央労働基準監督署長は2000年、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付申請について不支給を決定。再審査請求なども棄却された。

30    過労自殺、スズキと和解/東京高裁 (2007/05/16)
 2002年4月、スズキの社員=当時(41)=が自殺したのは、長時間労働によるうつ病が原因として、両親が同社に損害賠償を求めた訴訟は14日、同社が両親に和解金6,000万円を支払うなどの条件で、東京高裁で和解が成立した。
 
和解条項によると、和解金のほか、
・ スズキが小松さんの在職中の貢献をたたえ、両親に対し哀悼の意を表する。
・ 同社が、従業員の健全な労働環境の維持、改善に努めること。・・・などが条件。
 一審が認めた同社の安全配慮義務違反については、「認めることは困難」と記載された。
 
 一審の静岡地裁浜松支部は昨年10月、小松さんが月平均約100時間の時間外労働をしていたと指摘。「長時間労働など業務を要因として、うつ病を発症した」と認めた。また、スズキが負担を軽減させるための措置をしなかったとして、同社の安全配慮義務違反を認め、約5,800万円の支払いを命じた。

31    「ばかやろう」で解雇は無効/名古屋地裁 (2007/05/14)
 仕事で上司とやりとりした際、「ばかやろう」と言ったことを理由に解雇されたのは不当として、日系ブラジル人の男性通訳(35)が、勤務先の人材派遣会社(静岡県浜松市)を相手に、地位確認などを求めた訴訟の判決が9日、名古屋地裁であった。
 多見谷寿郎裁判官は「発言は1回限りで、合理的な解雇理由とはいえない」として、昨年7月の解雇処分は無効と指摘。会社側に解雇時から判決確定まで月当たり355,000円の給与を支払うよう命じた。
 判決によると、原告のダ・ローシャ・アントニオ・マルコスさんは、派遣先の自動車部品会社で、通訳や一緒に派遣された日系ブラジル人らの勤務管理を担当。昨年5月、上司と有給休暇の申請方法をめぐり、電話で口論となり「ばかやろう。おれは子どもではない」と発言したところ、翌月解雇された。

32    アドバイザースタッフは労働者に非ず/長野地裁 (2007/04/25)
 2000年に起きたオーストリアのケーブルカー火災事故で、契約社員としてスキーツアーに参加し、死亡した福島県猪苗代町のスキーコーチ出口沖彦さん=当時(42)=の妻(50)が「夫は労働者災害補償保険法に基づく労働者であり、労災認定しないのは事実誤認」として、国を相手取り、遺族補償年金などの不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決が24日、長野地裁であり、宮永忠明裁判官は原告側の請求を棄却した。事故で出口さんら日本人10人を含む155人が死亡。裁判では、小賀坂スキー製作所(長野市)と、スキー用具の性能向上で助言するなどのアドバイザースタッフ契約を結んでいた出口さんが労働者に当たるのかが争点になった。
 原告側は「アドバイザースタッフ契約により労働者の地位を取得した」と主張。国側は「同契約は労務提供を目的とするものではなく、使用従属性も認められない」として、労働者に当たらないと反論していた。
 訴状によると、出口さんは小賀坂スキー製作所が企画したスキーツアーを引率中の2000年11月、オーストリア中西部カプルンで起きたケーブルカー火災事故に遭遇、死亡した。
 2002年6月、長野労働基準監督署長は遺族補償年金と葬祭料の不支給を決定。労働保険審査会への再審査請求も2006年2月に棄却された。

33    シャープ液晶発明対価が和解/大阪地裁 (2007/04/07)
 液晶ディスプレーの技術開発をめぐり、シャープの元研究員男性が発明の対価の一部として、同社に5億円を求めた訴訟は1日までに、大阪地裁(山田知司裁判長)で和解が成立した。同社が男性に解決金を支払う内容だが、金額は明らかにされていない。
 男性側代理人、同社ともに「裁判所から和解勧告があり、最終的に受け入れられる内容だったので応じた」としている。
 訴えによると、男性はシャープの液晶ディプレー開発プロジェクトのチーフなどを担当。液晶表示の高速化、低コスト化などをもたらす新技術を複数、完成させた。同社は1989年以降、日本や米国、ドイツなどで特許を出願し、取得した。
 男性は退職後の2004年3月、発明への報奨金として77万円を受け取ったが、不服として同年6月に提訴。同社が特許権の存在する2009年までに受ける利益を960億円と推定し、自身の貢献度から、発明の対価は約115億円に上ると主張していた。

34    府立病院医師過労死に1億円賠償命令/大阪地裁 (2007/04/05)
 大阪府立病院(現大阪府立急性期・総合医療センター)麻酔科の常勤医として勤務していた奥野恭嗣さん=当時(33)=が死亡したのは過労が原因として、母親の泰子さん=大阪市中央区=が府に約1億5,300万円の賠償を求めた訴訟の判決が30日、大阪地裁であった。古谷恭一郎裁判長は「死因は業務や研究活動の重い負担によるもの」と認め、府に約1億600万円を支払うよう命じた。大阪府は控訴する方針。
 判決によると、恭嗣さんは1994年7月から同科に勤務し、1996年3月5日未明に急性心機能不全で死亡した。
 恭嗣さんの労働時間の証拠として、病院の夜間勤務等命令簿などが提出されたが、同裁判長は「手当てに充てる財源の制約から、実態とは異なる記載がされており、信用性は低い」と指摘。同僚医師の証言などを基に、恭嗣さんの時間外労働が死亡前の1ヵ月間で88時間以上、2〜6ヵ月間で月平均80時間以上に及んだと推定した。
 また、論文の作成・発表など業務以外の研究活動の負担について「病院の業務遂行に寄与しており、考慮すべきだ」とし、業務量の低減や人員配置の見直しなどの措置を取らなかった病院側の安全配慮義務違反を認めた。

35    同じ裁判所で労災をめぐって別の判断/東京地裁 (2007/04/01)
 自殺が労災であると認めた3月14日の判決(東京地裁)が確定した小児科医中原利郎さん=当時(44)=の遺族4人が同じ東京地裁で勤務先の病院を運営する立正佼成会に約2億5,000万円の損害賠償を求めた訴訟で、29日の判決で遺族の請求を棄却した。
 湯川浩昭裁判長は「過重な身体的・心理的負担がある業務をしていたとはいえない」と14日の判決とは反対の判断を示し、自殺の原因を過労とは認めなかった。この賠償請求訴訟は、労災認定訴訟とは別の裁判官3人が担当した。
 判決によると、中原さんは1987年4月から、東京都中野区の立正佼成会付属佼成病院に勤務。1999年2月から小児科部長代行となった。同年3月から6月ごろにかけて、うつ病を発症し、同年8月に病院の屋上から飛び降り自殺した。原告側は「代行就任前後で小児科の常勤医が減り、2日しか休めなかったり、8回も宿直勤務する月があるなど、業務は過酷だった」と主張したが、湯川裁判長は「宿直中に仮眠できないほど患者は来ず、日程の割り振りにも一定の余裕があった。業務が原因でうつ病を発症する危険がある状態だったとはいえない」として退けた。

36    社内飲み会も業務/東京地裁 (2007/04/01)
 勤務先の会社内で開かれた飲み会に出席後、帰宅途中に地下鉄の駅の階段で転落死した建設会社部次長の男性=当時(44)=について、妻が「通勤災害で労災にあたる」として、遺族補償などを不支給とした中央労働基準監督署(東京)の処分取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は28日の判決で労災と認めた。
 訴訟で労基署は「会合は業務ではない。飲酒量も相当あった」と主張したが、佐村浩之裁判長は「酒類を伴う会合でも、男性にとっては懇親会と異なり、部下から意見や要望を聞く場で出席は職務。飲酒は多量ではなく、酔いが事故原因とも言えない。降雨の影響で足元も滑りやすかった」と判断した。
 判決によると、男性は1999年12月、東京都中央区の勤務先2階で開かれた会議の後、午後5時ごろから6階で開かれた会合で缶ビール3本、紙コップ半分ほどのウイスキーを3杯飲んだ。午後10時15分ごろに退社し、約10分後、地下鉄日比谷線築地駅入り口の階段で18段下の踊り場まで転落。頭を強く打ち、病院に運ばれたが死亡した。
 労基署は、2000年、妻の労災申請に対して「通勤災害ではない」として不支給決定した。

37    スカイマークの団交拒否は不当労働行為/東京地裁 (2007/03/25)
 航空会社「スカイマーク」(東京)が契約社員の正社員化を求める団体交渉に応じなかったとして、航空会社従業員による横断的な労働組合「スカイネットワーク」(東京)が同社に300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は16日、会社に55万円の支払いを命じた。
 山口均裁判官は「団交拒否には正当な理由がなく、不当労働行為に当たる」と判断した。
 判決によると、労組は2005年4月、契約期間が切れる翌5月末で雇い止め(更新拒否)を予告された整備士の契約社員を、正社員にすることなどを求め団交を要求したが、同社は2006年8月まで応じなかった。同社は「契約社員の採用時、正社員にするという合意はなく、交渉事項になりえない」と主張。
 スカイマーク側は、同社本社前で労組が行ったビラ配布などで名誉を棄損されたとして、労組に2,000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求め反訴したが、同地裁は「団交拒否を断念させるための宣伝行動で、必要な行為」として請求を棄却した。

38    日産センチュリー証券労組副委員長解雇無効/東京地裁 (2007/03/14)
 配転が不当労働行為に当たるかどうかを東京都労働委員会で審理中、提出した営業日誌が個人情報保護法違反などに当たるとして懲戒解雇された日産センチュリー証券(東京)労働組合の副委員長が社員の地位確認などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は9日、解雇を無効とし、同社に未払い賃金の支払いを命じた。
 蓮井俊治裁判官は「営業日誌に顧客名はあるが住所、電話番号はなく、特定の個人は識別できない」として、個人情報保護法違反に当たらないと判断。同社は「情報漏えいで被害を受けた」と主張したが「日誌は提出後すぐに撤回され、会社側は金融庁に『顧客へ被害が及ばないと判断している』と報告している」として退け、解雇権の乱用を認定した。
 判決によると副委員長は2005年1月、東京から新潟県への配置転換命令の撤回を求め、都労働委員会に救済を申し立てた。同年11月の審問で配転を了承したと主張する会社に反論するため、行動記録を付けた営業日誌を提出。日誌に顧客の氏名や訪問場所が記載されていたことから、会社側は翌月「就業規則や個人情報保護法に反する」として懲戒解雇した。
 同社はユニコムグループの中堅証券会社で、山一証券破たん時に社長だった野沢正平氏が社長を務めている。

39    TBS減額訴訟が和解/東京地裁 (2007/03/08)
 TBS(東京)が企業年金制度を同意なく変更し、受取額を大幅減額したのは契約違反として、同社OB約340人が変更前の受給権確認を求めた訴訟が6日、TBSが原告を含む全年金受給者約730人に計約10億円を支払うことなどを条件に東京地裁(中西茂裁判長)で和解した。
 原告代理人弁護士らによると、制度変更による試算損失は一人当たり約800万円。受け取り方の違いもあり、和解で取り戻したのは平均約180万円になるという。
 また和解に際し、TBSは「受給者の権利や生活への配慮が十分ではなく、原告らに多大な負担、迷惑をかけたことを認め、遺憾の意を表する」と伝えた。TBSは「円満に解決したことは喜ばしい」とのコメントを発表した。
 訴状などによると、TBSは2004年8月「低金利で年金財政が逼迫し、会社の経営を圧迫している」として年金受給者に支給額の約6割カットと、一括払いの一時金による補てんを通知。翌年4月から実施された。これによって、平均的なケースで月額25万円が10万円となり、一時金は約1,950万円。原告は平均余命までの受給見込み額を大きく下回るとして提訴した。

40    解雇無効、9億9000万円支払命令/最高裁 (2007/03/08)
 愛知県半田市の山田紡績が事業縮小に伴い、解雇した紡績部門の100人が従業員の地位確認や賃金支払いを求めた訴訟の上告審決定で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は6日、解雇を無効とし、判決確定までの賃金支払いを命じた二審名古屋高裁判決を支持、会社側の上告を退け、原告勝訴が確定した。
 昨年1月の二審判決などによると、山田紡績は2000年10月、民事再生法の適用を名古屋地裁に申し立て、翌月に紡績事業の廃止を従業員に通知。2001年2月までに、従業員計約160人のうち紡績部門の従業員をほぼ全員解雇した。民事再生法は適用され、不動産事業は存続した。
 2005年2月の一審名古屋地裁判決は「会社は民事再生の申し立てについて従業員に事前に相談せず、それまでの事業を継続するという説明を翻した。極めて乱暴な解雇」として請求を認めた。二審判決も同様に判断して会社側控訴を棄却した。



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